最強打者イチローの「有終の美」とは・・・
日本プロ野球が産んだ最強打者イチローの「有終の美」とは 2013/04/29
同点で迎えた八回裏、監督として犠打のサインを出して2死二塁の見せ場をつくる。
そして「代打、オレ」。自ら代打を告げ、安打を打つ。決勝点を奪うと、九回表はクローザーとして登板し、勝つ。日本ハムの大谷翔平の上をいく監督、野手、投手の3刀流。こんなことができる選手が1人だけいる。
ヤンキースのイチローだ。
これまでメジャーで抜群の実績を残してきたイチローだが、今季の起用法をみると、守備しか評価されていないように思える。左投手のときは先発落ち、代打も送られた。イチローは左投手を苦にしていないはずだが…。今年の10月に40歳。「年齢を考えての休養」も命じられた。開幕直後は公式戦のスピードに順応するため、多く打席に立ちたいが、そんな気持ちもお構いなしだ。
あと百本あまりの安打で日米通算4000安打の金字塔をうち立てる。100年を超える大リーグの歴史でも、4000安打達成は2人だけだが、ヤンキースはそんな記録を考慮する球団ではない。4月8日、今季初めて先発落ちした際、イチローは「結果を出していたら、そんなことになっていないわけで、分かりやすい理由と思っているけどね」と話した。
2011、12年と2年連続で打率は3割を切った。これを契機にイチローに対する空気は変わった。「足が衰え、内野安打を稼げなくなった」「驚異的な動体視力がイチローの打撃の核。加齢で視力が落ちた」…。野球関係者の中で、イチローの限界を示唆する声も大きくなった。日本プロ野球が産んだ最強打者の「有終の美」を議論する時期がきたようだ。
「イチローイズム」(石田雄太著、集英社文庫)の中で、メジャー1年目のシーズン後、イチローが「50歳のシーズンを終えた時にね、こう言いたいんですよ。『まだまだ発展途上ですから…』って」と話したことが紹介されている。
スポーツ科学が発達している中、引退時期だけが昔と変わらず40歳前後ということに、イチローは疑問を投げかけている。だから50歳現役という発想が出てくるのだろう。
昨オフ、ヤンキースと2年総額1300万ドル(約10億8000万円)の契約を結んだ。トレードはあっても、来季までメジャーでプレーできるだろう。問題はその後だ。今の流れでは、50歳までメジャーでプレーすることは難しい情勢だ。年俸を落とすか、マイナー契約から昇格するか。打率が3割に届かなくとも、チャンスメークする守備の良い外野手と割り切れば、チャンスも出てくるだろう。中日の山本昌広投手は今年8月に48歳だが、今季既に1勝。打率3割を求めなければ、イチローなら50歳現役も無理ではない。後は現役続行と「イチロー」というブランドの価値を、本人がどう考えるかだ。
日本でのプレーも1つの選択肢だが、それでは往年の紅白歌合戦出場歌手が地方巡業しているような感じもする。監督、野手、投手の3刀流なら、ファンの夢も広がるだろうが…。
「世の中の固まったイメージをぶつけられる側は、普通、『だったら、そのイメージを越えよう』と思う。でも、ぼくは、それだけでは、つまらないんですよね。『予想とぜんぜん違う方向で越えよう』と思うんです」(「自己を変革する イチロー262のメッセージ」ぴあ発行)
天才は年齢と戦いながら、どんな選択をするのか。世間をあっと言わせるようなことを期待したい。




